露出狂の苦悩
衣替えが好きな季節があって。
衣替えが嫌いな季節がある。
薄い服が好きだから、ちょっとくらい無理しても着る……
……そして、あたしは毎年同じ時期に風邪を引く。
「またやっちゃった」
体温計が九度を指すのを見て、あたしは今年も反省していた。
情けない、と思い毎年悔やんでいるのに、それでも今年もやってしまった。
「あら、全然食べてない」
ノックなしに扉が開いて、どこか嬉しそうに母は言った。
手の付けられていない粥を、特に気にする様子なく下げる。
「……食欲ない…」
熱で身動きがとれず、自分の手のひらの中にいる娘がうれしいのだろう。
普段はどこにいるかも分からない放蕩娘だから。
「…レミちゃん、栗田くんがお見舞いにきてくれたのよ」
その名を聞いて、あたしは急いで身を起こす……と熱のおかげでものすごい頭痛が襲ってきた。
部屋に入ってきた栗ちゃんは、両手に果物がたくさん詰まったかごを持っていて、心配そうな顔をしてあたしをじっと見ている。
「……平気よ」
やせ我慢を言うけれど、栗ちゃんの表情は変わらなかった。
「……果物もってきたんだけど」
「食べる」
あたしが即答すると、母が目を丸くした。
その表情が「食欲ないんじゃなかったの?」と言っていた。
「あ、じゃ、ボクむいてきてあげる」
「いいのよ、お母さんがやるわ。
……それより栗田くん、レミちゃんの相手してあげて。
熱が出て遊びにいけないから拗ねてるのよ」
否定できないから、あたしは気恥ずかしくて視線をそらす。
「………りんごある?」
「はいはい、じゃあむいてきてあげる」
あたしがもそもそと右手を伸ばすと、栗ちゃんは柔らかく手を握ってくれた。
「レミちゃん、もうすぐ花火大会があるね」
「……去年行ったよね」
「一緒に行こうね?」
「うん……でも、今年は栗ちゃんと二人っきりがいい」
「みんなと一緒に見るのも楽しいよ?」
「……栗ちゃんがそういうなら」
「レミちゃん、浴衣着る?」
「……やだ、去年で分かったでしょ?
あたし、着物系って体型が合わないのよ」
「そんなことないよ。
………おしとやかに見えたよ?」
「今年も栗ちゃんは浴衣着る?」
「うん」
「なら、浴衣で行く」
「……それじゃ、早く風邪治さないとね?」
「……今日の栗ちゃんは、いつも以上に優しいね」
「今日のレミちゃんはおとなしいね」
「……今だけよ」
「知ってるよ」
モナコはTシャツが好きです。
服選びが楽。
もう、着る服が無くて今困ってます。早く夏にならないかなぁ。
しかし栗田さん優しい……
風邪引いたなら、こんな人にお見舞いに来て欲しいです。
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